泌尿器科・泌尿器科医とは

なぜ泌尿器科医は朗らかなんでしょうか?
泌尿器科の魅力と泌尿器科医であることのベネフィットについて

泌尿器科は尿路疾患から、男性生殖器系、女性の骨盤疾患にいたるまで、比較的広い領域の治療を専門分野とする科です。実際の臨床においては、外科であると同時に内科的な疾患管理も行なっています。
また泌尿器科の中には専門領域として、小児泌尿器科、泌尿器腫瘍(オンコロジー)、腎移植、尿路結石、尿路感染症、女性泌尿器科、内分泌・生殖機能・性機能、老年泌尿器科・前立腺肥大症、排尿機能・神経泌尿器科、外傷・救急医療、エンドウロロジー・腹腔鏡、基礎研究、オフィス・ウロロジーなどがあり、単独の科でさまざまな分野が存在することは、泌尿器科の大きな特徴となっています。このように、泌尿器科には多くの魅力があります。これからその魅力のいくつかをご紹介します。

1. 手術:その幅広さとキャリア形成

とても重要な魅力です。外科医と内科医の生活はおおきく違います。手術が好きな外科医は、医療スタッフや同僚で作り上げるチームワークを大切にしながら、自分の手で行なう手技を楽しみます。外科医には、手術をコントロールし、チームを率いていく資質が必要とされます。これからの人生で週に1-2日は手術室にいることが想像できますか。そのような人とって泌尿器科は大きな選択肢のひとつといえます。
次に考えるべき事は、泌尿器科で行われるどんな手術が好きかどうかです。ひとことで泌尿器科の手術といっても、数10分で終了する前立腺生検や膀胱鏡検査、包茎手術から、手術時間が10時間以上の回腸利用新膀胱、膀胱摘除術まで、実際の手術手技はとてもバリエーションにとんでいます。この多種多様な手術バリエーションが存在することは、泌尿器科医を目指す医師にとって、最も大きな魅力の一つとなっています。最初はチームの一員として大きな手術に参加しながら、キャリアを積むにつれて、専門的な特殊な泌尿器科手術に特化していくことは、キャリア形成として十分に合理的な選択といえます。このように泌尿器科医の中には、「一般の泌尿器科医」にあきたらず、最終的には腎臓・前立腺・陰茎などの特定の泌尿器科手術の専門家になる泌尿器科医も多いのです。
泌尿器科手術はまた、術前のイメージングの質や量が高い事で知られています。例えばDIPやCT、MRIなどといった放射線画像検査に始まり、膀胱鏡検査、尿管鏡検査、尿路造影検査などです。これらのイメージによって、明確な術前評価と、正確な手術計画、実行可能な手術目的を設定する事が可能となります。つまり、一般外科領域のような探索的な試験開腹手術は、ほとんどおこなわれません。そのため予定手術がほとんどであり、一般外科領域と比べて、はるかに満足のいく手術経験を体験する事が出来ます。

2. 泌尿器科医という人々

特定の専門分野にいる人が、必ずしも同じような性格や傾向を持つ訳ではありませんが、泌尿器科医を無理やり単純化してステレオタイプとして表現する事は可能です。もしも泌尿器科医の人が周囲にいるなら、その人を思い出してみてください。泌尿器科医のステレオタイプは、優しくて、面白く、ちょっと下世話ところもある気取りのない外科医です。これは不思議な事に日本以外でもおなじでアメリカでは泌尿器科医は”friendly, funny, and happy down-to-earth group of surgeons.”と表現されます。つまり、あなたがそのようなタイプの研修医なのであれば、あなたは典型的な泌尿器の資質を持っている事になります。おそらく、泌尿器科に入局しても何の違和感もなく、周囲に溶け込んでいることに気がつくはずです。

3. 泌尿器科医のライフスタイル

愛や健康はお金で買う事はできないですが、人生の生活設計を考えるうえで収入や余暇は非常に重要です。一般にマイナー外科と呼ばれる外科領域の医業収入は安定して高額で、トレーニングを終了した泌尿器科医の収入は保証されています。また泌尿器科は、外科領域だからといって必ずしも朝早くから夜遅くまでの勤務が必須という訳でもありません。泌尿器科は救急疾患の少ない科である事が特徴で、ほとんどの手術は予定手術で行なうことが出来ます。医師にとって重要なポイントである「自身のライフスタイルを自分で決定する事」が可能であり、熱意を持って仕事に打ち込む事も可能である一方で、ゆとりを持ったライフスタイルを選ぶ事も可能です。

4. 先進的医療と研究

泌尿器科は外科手術の中でも最先端のテクノロジーを用いて手術を行なう事で知られています。例えば、ほとんどの手術は腹腔鏡手術に置き換わっており、その腹腔鏡手術も手術ロボットを用いたロボット支援手術に取って代わろうとしています。2015年の時点においてロボットを用いた手術が保険で認められているのは、泌尿器科の行なう前立腺全摘除術のみであり、国内のロボット外科手術全体のリーダ的存在となっています。
また、画像研究、医工連携、新規抗がん剤や排尿に関する薬剤の開発も盛んであり、数多くの臨床研究および基礎研究のテーマが存在します。レジデント・プログラムは、こういった臨床研究・基礎研究に興味がある人にも開かれています。

5. クリニック・外来

泌尿器科診療の大部分は、実は外来で実施されています。外来では、泌尿器科医は内科的に投薬などの治療することができるだけでなく、小さな手術を行なう事もできます。内科および外科が併存している科というのは、泌尿器科の非常にユニークな面の1つです。クリニックでの泌尿器科医は、患者が必要とする治療が内服治療なのか手術治療なのか、適切な治療法について診断を行います。その他にも、クリニックや外来において、患者との長期的な信頼関係が確立され、クリニックでの診療が医師の生活の一部になることは大きな魅力です。クリニックや外来での診療は、すべての泌尿器診療を支えており、泌尿器科医師のキャリア選択の一つであるといえます。

6. 泌尿器科の専門性と泌尿器科内での専門の選択

多くの医師にとって泌尿器科医のイメージは、高度に教育された泌尿器領域の専門家です。多くの内科医は、泌尿器科の問題に対処することを避ける傾向があり、患者が泌尿器科領域の問題を抱えていると判断すると、ほぼすべての患者を泌尿器科に送り付けます。そして泌尿器科医は、自分の領域と違う領域においては、知識が少ない事もあり得ます。すなわち、全ての領域の疾患をまんべんなく診察・治療したいという希望を持った医師にとっては、泌尿器科医になる事を選ぶのは正しい選択ではないかもしれません。
また、最初に述べたように「泌尿器科医」になったとしたとしても、その中にはさらにさまざまなフィールドが存在します。泌尿器科医の中には、生殖・尿路腫瘍、移植、結石、排尿障害、小児泌尿器科、や女性泌尿器科を自分自身の専門とする泌尿器科医も存在します。またいわゆる「一般泌尿器科医」であることを選択する人もいます。しかしながらそれらの、泌尿器科内での専門分野の選択は、必ずしも数年内に決めなければいけない訳ではありません。研修医にとって泌尿器科を選択する事は、今後の医師としてのライフスタイルにおける大まかな方向性を確定する事であり、それ以降のライフスタイルやキャリア形成の詳細は、あなた自身が自分のために思い描いて、実現する事によって形成されていきます。