ご年齢:40代 性別:女性
1.サムスカによる治療を受けると決めた理由は何でしたか?
私の母の家系に多発性嚢胞腎の遺伝があり、何人もの親族が透析生活を送っております。
母は多発性嚢胞腎と診断されてから、辛く長い食事療法を何年も続け、今では週3回の透析生活となりました。
偶然にも私はこの多発性嚢胞腎の遺伝を受け継ぎました。
私も腎臓や肝臓に嚢胞が見つかった頃から、多発性嚢胞腎の遺伝を不安に思い、定期的に検査をするなど経過観察をしておりました。
そんなある時、検査の数値が急に下がり、確実に難病の多発性嚢胞腎と診断され、このままのスピードで進行すれば、近い将来には食事療法や透析は避けられないと確信しました。
現在は会社の正社員として働いており「この先も定年まで生き生きと働き続けたい」「家族との楽しい生活を長く続けたい」など様々な思いがあります。
そこで、初めて服用する薬の副作用についての不安はありましたが、サムスカにより少しでも症状の進行を緩やかにし、近い将来、さらに新しい治療方法が開発される可能性を期待しつつ、現在の生活を長く続けることが出来るようにと治療を始める決意をしました。
2.治療を始める前に、不安だった点を教えてください。
以前よりサムスカについてはいつ始めようかと考えてはおりましたが、周りの方から「体験談を聞いたけれども、6Lもの飲水が大変でトイレも行く回数が多く大変らしい」と聞きました。自分自身でも飲水とトイレの回数が、通勤や買い物等、日常生活にどれほど影響があるのか始めるまでは不安でした。
3.実際に治療を始めてみて、いかがでしたか?
現在のところは服用前と同じ生活で、生活には殆ど影響はありません。
治療前は飲水量分の排尿ができてないのか、お腹が少々張った感覚を覚えるようになり「これから先、どんどんお腹が張って苦しくなっていくのか」と少々心配もしておりました。が、治療を開始して直ぐにお腹の張った感覚は解消され、治療前に比べ調子が良くなりました。
また、飲水とトイレについては、退院後数日間は飲水量のスケジュールについて少々工夫したりということはありましたが、現在では身体も大分慣れましたので、飲水のタイミングや量を調整しながら、仕事では会議、研修、出張、飲み会、またプライベートでは習い事、映画鑑賞、食事会、旅行など趣味やイベントも以前と殆ど変わりなく楽しんでおります。
4.生活上の制限について、より詳しく教えてください。
生活上の制限は特にありません。が、念のため塩分摂取量やたんぱく質の取り過ぎ、寝不足などには気を付けています。
飲水とトイレについては、会議・プライベートでのイベントがある時などは、
飲水量や飲水スケジュール、薬の服用時間を調整するなどの工夫をしております。
例えば、私は先日、映画鑑賞とその後の食事会を十分に楽しみました。上映直前の飲水を避け、その分鑑賞後の飲水量を増やし、また座席はインターネット等で出口に近い通路側を確保するなどの準備をしました。が、実際は映画鑑賞中にトイレに行かれる方が何人もいらっしゃいましたので、トイレに行くのも特には目立ちませんでした。
また旅行で、寺社巡りや庭園散歩を楽しむ際には服用時間や飲水量を調整するなど、工夫次第で通常通り楽しむことが出来ました。
会社の食事会でも、服用時間になればサッと薬を出して服用するなど、先は長いので、無理して遠慮し過ぎないようにしております。
5.水分を採る工夫や、排尿に対する工夫などがあれば教えてください。
多くの方が一番不安になるポイントが、飲水量とトイレに関してではないでしょうか。
私の場合、トイレに関しては社内では遠慮することなく行かれる環境ですので、特に苦労はありません。
移動時には、通勤ルートは勿論、日常生活で行動する範囲のトイレの箇所について確認し、乗り物に乗る前には可能な限りトイレに行くなど気を付けるようにしております。
飲水については、私は真水を飲むのが大変苦手なので、好きな紅茶やハーブティ、スパークリングウォーターを飲むなど色々と工夫をすることでストレスなく過ごしております。
外出する際には可能な限り水筒を持参しております。
次に、私の飲水について下記のとおりご紹介いたします。
薬の服用時間は、午前中8時半頃と午後7時半頃の1日2回の服用です。
飲水の準備として、普段するマグカップやグラスの容量を確認しておきました。
容量が200mlのカップですと、何杯も飲むのが私には辛く感じるので、容量が300ml以上のカップ、グラスも用意する工夫もしました。
また水は、自宅で利用しているウォーターサーバーの水の注文量を増やしたり通販を利用するなどして確保しております。また、会社には常にペットボトル2Lを2本程ストックしております。
<平日会社での飲水スケジュール>
水が苦手な私には精神的にも辛いので、少し精神的に余裕を持たせて長く続けられるように次のようなプランを考えました。
- 5:00((起床)1L (ジュースを300m、朝食時に紅茶700ml)
- 7:00
(通勤) - 8:30
1L (300ml×3杯.薬服用・ペットボトルの水) - 9:00
300ml×2杯 (お茶,紅茶) - 11:30
500ml (自宅から好きな飲み物を水筒で持参) - 12:00
(昼食) 600ml - 13:00
300ml×2杯(お茶,紅茶) - 15:00
- 16:00
300ml (お茶,紅茶) - 17:00 (残業時には喉が渇いたら飲水)
(通勤) - 19:30
500ml薬服用 (スパークリングウォーターなど) - 夕食
600ml (夕食時のスープ、食後の飲み物など) - 22:30(就寝) (就寝中トイレ2回程の都度、飲水200ml。)
最初は少しでも楽に飲水が続けれられるように2、3通りのプランを試した結果、現在の飲水プランとなりました。辛い飲水をダラダラ続けるのではなく、午前中に飲水量を増やしてひと頑張りし、午後は次第にリラックス出来るようなスケジュールとしたところ、飲水のストレスは殆ど無くとても楽になりました。
夕方までに16:00までに約5Lの飲水量を達成することができるので、アフター5は飲水のストレスもなく、食事や好きなワインを楽しむことができます。
また休日の飲水については、もうひと工夫しております。
休日は会社生活のように定期的に飲水するのが難しく、また気にし過ぎるととても気が休まらず、長く続けるのも難しいと思われます。
そこで、休日前夜の就寝中のトイレの度の飲水量、食事中の飲水量を平日の飲水量の倍量にするなど、一回の飲水量を少々多めに、飲水回数を少な目にしたところ、日中には気を付ける程度で、もし喉の渇き感じたら飲水をするように心がけることで約6Lの飲水量を達成することが出来ました。
6.食事制限や塩分制限はありますか?また、お酒は飲んで良いのでしょうか?
生活上の制限は特にありません。
入院時の食事も確認しましたが、塩分の他には特に制限はありませんでした。
念のため塩分摂取量を控え目に、また、たんぱく質の取り過ぎ、寝不足などには気を付けています。
アルコールについては最初は気になりましたが、会社の飲み会にも参加してアルコールも飲みます。
また私はワインが好きで夕食時にはよくワインを楽しみます。やはり服用により肝臓には少なからずとも負担がかかるのではとの心配もありますので、薬服用前よりは控え目に、飲み過ぎないように注意しつつ楽しんでおります。
7.薬が高額ですが、治療費はどうなりますか?また補助金等はありますか?
多発性嚢胞腎は難病指定となっており、保健所に届け出をしましたので、病院での支払い額の上限額が決まっております。
上限額や補助などは人によって違うとのことですが、上限が決まっているので安心して治療をすることができます。
8.夜トイレには何回おきますか?睡眠はとれますか。
退院後数日間は夜3回程起きました。が、起きることに関して前向きに考えておりましたので、寝不足やストレスにはなりませんでした。
先生から「落ち着いてきたら夜起きる回数が減りますよ」と伺っておりました通り、退院2週間後には、1~2回起きる程度になり、現在では全く負担はありません。
9.これから治療を考えている方に対して、メッセージをお願いします。
世の中には何種類もの難病があります。
私の知り合いでもある難病の方がいらして、数年で症状が進むのを目の当たりにし、自分の難病について改めて考えてみる機会となりました。
多発性嚢胞腎に於いては、現在はサムスカが開発されましたので、このお薬を飲み、飲水とトイレに行くという日常生活上の行動で、難病の進行を緩やかにすることが出来る可能性があります。
サムスカのお陰で、少しでもよい状態を維持し、将来新しい治療方法が開発されるかもしれないという期待と希望をもって治療を進めることができます。
とはいえ、新しい事にチャレンジをするに当たっては心構えが必要となります。
サムスカの治療を始めるに当たっても、まだ数値も問題なく健康な時期に始めるとなると、従来通りの生活と変わる点もありますので、やはりもう一つ心構えが必要なのかもしれません。
私の場合は、数値が下がってきたところで治療を始めました。しかも想像以上の進み具合でしたので、サムスカの治療を始めるに当たって躊躇はありませんでした。
これ以上進むよりは「とりあえず治療をやってみるしかない」と前向きな気持ちで挑むことができ、始めるにはかえって良いタイミングだったのではないかと思っております。
「お薬に興味はあるけど、飲水とトイレが気になって・・・」となかなか一歩が踏み出せない方も多いとは思いますが、工夫次第でほぼ通常通りの生活を楽しむことが可能です。
不安があれば先生と相談しながら治療を進め、もしサムスカが合わなければ途中でやめることも可能です。
一度限りの人生、この難病の遺伝を受け継いだのは運命ですし、一生に亘って長いお付き合いになります。
ただ悲観するのではなく、明るく前向きに「先生と一緒に治療を進めていこう」という気持ちが大切なのではないかと思います。