要旨
前立腺とは、尿を切ると同時に精巣を守る男性特有の免疫器官である。この前立腺にできる前立腺がんは、現在先進国ではどの国でも男性のがんの中でナンバーワンになっており、日本でも最も増えているがんだ。その一番のリスクは脂肪である。脂肪摂取量が多いと、前立腺がんの危険が高まる。一方、アジアの国々でこれまで前立腺がんが少なかった理由の一つと考えられるのが、大豆である。また、カレーの中に含まれるクルクミンやわさびにもこのがんを抑制する効果がある。
前立腺がんを発見するには、前立腺だけで作られるPSAというたんぱく質の値を測ればよい。この値が高い場合は、MRI検査をして、がんの疑いがないか観察する。さらに疑いがあれば生検を行う。発見された場合、必ずしも直ちに治療するのではなく、年齢やがんの悪性度などを見て治療するかどうか見極める。すぐに治療すればよいとは限らないのだ。現在はロボットによる摘除手術が主流だが、一方で前立腺のどこにどれだけ悪いがんがあるか、かなりの確率で正確に予測できるようになってきている。将来は悪い部分だけ治療する「フォーカルセラピー(局所治療)」が可能になるだろう。
収録日:2014年5月2日 公開日:2014年8月7日