膀胱がん(膀胱癌)

順天堂医院の膀胱癌診療の特徴

膀胱がんは高齢の方に多く発症する病気です。膀胱の筋肉までがんが入りこんだ浸潤がんと、根が浅い筋層非浸潤がん、さらに転移がんとで治療方法が大きく異なるという大きな特徴があります。したがって、がんの根の深さや転移しているかどうかを正確に診断する必要があるため、診断から治療にいたるまで豊富な経験が必要とされます。当院はがん診療連携拠点病院であり、さらに当科では以前より多くの膀胱がん患者さんに診療させていただき、膀胱がん診療における国内を代表する施設です。手術に対しては尿道からの内視鏡手術を主に行い、再発予防や治療のために膀胱内へ薬剤を注入する治療も積極的に行っています。また、年間約20件の膀胱全摘除術を行い、新膀胱による尿路変更術も多くの患者さんに行っています。さらに最近ではロボット手術による膀胱全摘除術もすでに30件ほど行い、患者さんの負担を減らした安全な治療法として行っています。膀胱がんは患者さんの生活に強く影響し、適格な診断と治療が求められます。われわれは患者さんそれぞれに現在考えうるベストの診療を提供しますので、いつでもご相談ください。

膀胱がん(膀胱癌)について

膀胱とは

膀胱の解剖図

膀胱の解剖図

膀胱は腎臓で作られた尿をためる臓器です。腎臓から尿が送られてくる左右の尿管と尿を出す尿道がつながっています。皆さんが尿が溜まって我慢しているとおなかの一番下が張ったような感じがすると思います。その部分が膀胱です。男性と女性では少しまわりの臓器が違います。男性の場合には膀胱からでる尿道の周囲に前立腺があります。また、男性では膀胱のすぐ背中側が直腸ですが、女性は膀胱のすぐ背中側が膣、そのまた背中側が直腸になります。

 

膀胱がんとは

  • 膀胱の粘膜にできるがんです。
  • 血尿が最も多い症状です。痛みを伴わない場合が多いですが、膀胱炎などをともなう場合もあります。
  • 喫煙が膀胱がんの発がんリスクになります。
  • 家族性のものはあきらかになっていません。 がんの根の深さ(どの程度膀胱に食い込んでいるか)によって治療法が変わります。

膀胱がんはどのくらいの患者さんにできるのでしょうか?

日本人の男性では、膀胱がんは10番目に多いがんと言われています。人口10万人に対して25人程度の方にできます。男性が女性より3-4倍程度多いがんです。男性が多い理由ははっきりとはわかっていません。喫煙が膀胱がんができる原因と考えられています。以前は、男性の方が喫煙者が多いため膀胱がんができやすいのだろうと考えられていましたが、喫煙しないひとの統計でもやはり男性の方が3-4倍多いことがわかりましたので、他の原因があるだろうと考えられています。

タバコ以外に膀胱がんの原因はありますか?

タバコ以外にも特殊な化学薬品(ゴム、皮革、織物や色素工場で使用されるアニリン色素、ナフチラミン)やベンチジンなどの染料も膀胱がんができる原因です。その他に医薬品では抗がん剤のシクロフォスファミド、最近、発売禁止された鎮痛剤(頭痛薬)フェナセチンなどが報告されています。日本ではほとんど見ることはありませんが中東、北アフリカの地方病であるビルハルツ住血吸虫の感染も危険因子です。住血吸中が膀胱内に産卵することによりがんが発生すると言われています。例えばエジプトではほとんどの全ての膀胱がん患者さんの原因が住血吸虫と以前は言われていました。ただ最近は生活様式の欧米化によりだいぶ減って、今では半分くらいの患者さんが住血吸虫が原因だそうです。

膀胱がんも他のがんと同じように遺伝子の傷が発生の大きな原因と考えられています。最近の研究では膀胱がんの遺伝子変異は他のがんよりも多いとも報告されていますが、残念ながら原因となる特定の遺伝子の同定には至っていません。われわれも積極的に研究を続けています。

膀胱がんを予防する方法はありますか?

残念ながらタバコの禁煙や、上に示した特殊な薬品を防ぐこと以外に明らかになっている方法はありません。ただし、昔から水のきれいな地域に膀胱がんは少ないと言われ、実際われわれもそのように認識しています。また、飲水量を十分にとり、おしっこをがまんしないことが良いとも言われています。もちろん、はっきりとした科学的な証拠はありませんが、心がけていただいた方が良いでしょう。

膀胱がんの症状

膀胱がんの症状で最も多いのは血尿です。血尿のなかでも尿検査をやって初めてわかるような血尿ではなく、多くの方だ実際に自分の目で見て真っ赤なおしっこがでたために診断されます。膀胱がんが原因で血尿が出る時には、痛みが全くないことがよくあります。逆に、多くはありませんが、血尿が出ずにおしっこの時の痛みなどで見つかる方もいらっしゃいます。これは他のがんと同じですが、転移があった場合、転移している臓器による症状で見つかる方もいます。

診断方法/診療の流れ

尿検査、尿細胞診検査

潜血反応陽性あるいは顕微鏡的血尿(肉眼ではわからない、顕微鏡で初めてわかる血尿)、肉眼的血尿がある場合に尿細胞診で尿中の癌細胞の有無を診断します。

腹部超音波検査

腹部超音波検査尿を貯め膀胱を充満させることで内部を観察することができ、患者さんの負担が少ない検査として優れています。また、腎臓も同時に観察します。

膀胱鏡検査

膀胱鏡検査膀胱内部を観察し腫瘍の有無を判断します。以前は硬性鏡という金属製の内視鏡でしたが、現在は柔らかファイバースコープと以前より痛みが少ない検査となりました。診断に必須の検査で外来で行えます。

CT検査・MRI検査

これらの画像検査で癌が全身に広がっていないか、膀胱の周囲に広がっていないかなどを評価します。治療方針を決める上で必須の検査です。

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CT検査

MRI検査

 

PET検査

最近では膀胱がんの転移を見つけるのにPET検査が有用です。

膀胱がん浸潤形式の違い

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膀胱がんの治療

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)

内視鏡を使って膀胱の腫瘍を削り取ります。以下の写真に示すような内視鏡を使って、根の浅い癌であればこの手術だけで癌取り除くことが可能です。膀胱がんの第一選択となる治療です。また、筋層非浸潤性膀胱がんに対してはほぼ全ての患者さんに対してTUR-Btが終わった直後に膀胱内に抗がん剤を入れます。この方法により膀胱がんの再発リスクを減らすことが明らかになっています。

TUR-Bt+膀胱内注入療法

TUR-Btが終わって退院していただいた後で、膀胱内に薬剤を入れる治療を行います。これには2つの意味があります。1つは現在ある膀胱がんに対する治療で、もう1つは同じような膀胱がんが膀胱内にできるのを防ぐ予防のためです。治療としての膀胱内注入療法は「膀胱がん浸潤形式の違い」に書いたTisという上皮内がんに対して行います。この膀胱がんは膀胱粘膜から飛び出すような隆起性のがんではなく、膀胱粘膜と同じ高さで這うように広がっていくがんであるため、TUR-Btで全てを切除することは難しいと考えられています。そこでBCGを膀胱内に入れます。みなさん、「BCGワクチン」と聞いたことがあるでしょう。結核予防のために生後接種しているのが「BCGワクチン」です。「BCG」とはウシの弱毒の結核菌です。これを膀胱内にいれると膀胱の免疫反応に働いて膀胱がん細胞を破壊します。実際有効であることは科学的に証明されています。多くの場合、1週間に1回投与することを4-8回繰り返しますが、炎症反応が極めて強く、重症の膀胱炎のような症状(排尿時の痛み、血尿、排尿回数の増加、残尿感、など)や発熱が起こることがあります。中には半年おきに3回の膀胱内投与を繰り返す場合もあります。再発の予防に対してはBCGを使うこともありますし、抗がん剤を使うこともあります。膀胱がんの根の深さやその悪さ、数、大きさなどからどちらを使うかは判断します。

膀胱全摘除術

内視鏡でがんが取り除けない根が深い癌の場合、膀胱を全て摘出します。根の深い癌の場合、CTやMRIなどの画像診断で検出できないような小さな転移がある可能性が高く、多くの患者さんは膀胱全摘除術の前に、抗がん剤治療を行います。膀胱を摘出した場合は尿の出口を新たに作成する(尿路変更術)必要があります。

ロボット補助下膀胱全摘除術

現在日本では前立腺がんと、腎がんに対してロボット手術が主に行われています。われわれは膀胱がんに対する膀胱全摘除術もロボット手術で行っています。手術の傷が小さい、出血量が少ない、手術時間が短いなどの利点があり、患者さんへの負担はとても小さい手術方法です。残念ながら日本では保険診療として認可されていないので自費になります。

尿路変更術

尿路変更術は主に以下の3つがあります。

1. 回腸導管造設術

回腸導管は、回腸の一部に尿管とつなげ(図1)、反対側をお臍の横から出します(図2)。そこから自然におしっこが出ますので以下に示した袋を皮膚につけます。

図1

図2


 

2. 新膀胱造設術

新膀胱は「新しい膀胱」です。ですから、膀胱全摘除術を行った後でも、手術前と同じように尿道からおしっこをすることができます。ただし、その為には尿道を残さなくてはなりません。がんのひろがりによっては、尿道を残すことでがんが再発する可能性が高くなることがありますので、全ての患者さんにお勧めできるわけではありません。手術前の診断がとても重要です。

新膀胱も回腸の一部分で作ります。腸を球形に縫い直してそれに尿管と尿道を縫い合わせます。今までの膀胱と異なりおしっこが溜まったかどうかはわかりません。ですから夜でも2、3時間おきにおしっこを出してもらう必要があります。ただし、手術後長い時間が経つと、多くの患者さんは尿が溜まった感覚がある、とおっしゃっています。尿が漏れるわけではないのですが、どうやら尿道のどこかでその感覚が現れるようです。

3. 尿管皮膚瘻造設術

腸を使った手術を行えない患者さんや、手術時間を短くする必要がある患者さん、合併症の多い患者さんに対して行います。尿管を直接皮膚に出して自然におしっこが出るようにします。間に腸が無いためどうしても感染症の危険が高くなるという欠点があります。

膀胱温存療法

膀胱全摘除術が標準治療となるような浸潤性の膀胱がん患者さんの中で、手術をご希望されないような患者さんに対しては膀胱温存療法を行います。当科では抗がん剤の動注療法を行い、その後放射線療法を併用しています。抗がん剤の動注療法は全身投与よりも患者さんの負担が少なく、放射線治療も外来で治療可能です。

放射線治療

ご年齢や合併症などの理由で膀胱全摘除術が困難な場合、放射線と抗がん剤を併用して治療します。

また、転移がある膀胱がん患者さんに痛みを取ることを目的として転移部位に放射線療法を行うこともあります

抗がん剤全身投与治療

CTやMRIで既に転移(リンパ節や肺など他の部分にがんがある状態)が疑われる場合やがんが膀胱の周囲に広がっている場合は抗がん剤による治療が有効です。以前は、抗がん剤の全身投与は副作用が強く患者さんの負担が大きい治療と思われがちでしたが、最近では様々な副作用を減らす有効な治療が確立しているため、ちょっとした全身倦怠感程度ですむ場合が多くなっています。

治療待ち日数  2017/7/1現在
経尿道的膀胱腫瘍切除術  4週
膀胱全摘除術(術前補助化学療法を行わない場合)  8週

専門外来

膀胱外来 月曜午後

担当:家田健史

木曜

担当:武藤 智